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一挨一拶

 朝起きてから、就寝するまでに一体何回あいさつをしているのでしょうか。まずは家人に対しての「おはよう」から始まり、「いただきます」「ごちそうさま」「行ってらっしゃい」「行ってきます」、通勤の途上に「おはようございます」、会社に着いたら「おはようございます」「こんにちは」「ありがとうございます」「さようなら」、家に着いたら「ただいま」「おかえりなさい」「いただきます」「ごちそうさま」「おやすみなさい」・・・。

 私の経験上、こちらからあいさつをして一番の反応が素晴らしいのが、駅前駐輪場の管理のおじさんたち、大きな声で「おはようございます!」との返事が返ってきます。今日一日の元気をいただきます。案外シャイなのが若いお巡りさん、一瞬戸惑いが見え、言葉が返ってきません。バスの運転手さんは大抵の方が応じてくれます。道を歩いているときやジョギングをしているときにすれ違うとき会釈なりちょっとしたあいさつをしてくれるのは私より少しお年をめしたご婦人がた、男性はすれ違う前からこっちをじっと見据えている、あるいは一切目線を合わせない、やはり男性には闘争心が遺伝子に組み込まれているのでしょうか。案外意外だったのが、ニューヨークでのエレベーターの中での経験、必ず見も知らぬ人とあいさつをしていました。「私はあなたの敵ではありませんよ、安心してください」という発信のためなのだそうです。

 さて、あいさつは漢字にすれば挨拶ですが、“挨”には背をたたく、押す、押しのける、積極的に突き進むという、“拶”には迫る、近づく、相手に切り込んでいくという意味があります。そもそも禅宗で問答をして相手の修行の程度を試す“一挨一拶(いちあいいっさつ)”が語源です。中国宋代の禅の宝典で禅の修行の優れた指南書である『碧巌録』に「一挨一拶 其の深浅を見んと要す」とあります。こちらから発する言葉にどう相手が反応するのか。剣道でも、こちらからの攻めに対して相手がどのように応じるかで相手の錬度がわかります。玄妙な技が出たら最高です。挨拶とはまさに言葉の真剣勝負ではないでしょうか。

 では日々のあいさつはどうあるのが望ましいのでしょうか。まずは何気ない、さりげないあいさつの言葉にも自分の心をきちんとこめ、そして相手の目をきちんと見て伝えることが大事だと思います。勿論言い放しではなく、相手からの返事もきちんと受け止めることも必要です。双方向のコミュニケーションです。ある小学校の先生が「お互いの心にノックする」と表現していました。まさに、部屋に入るときにドアを軽くノックする、相手も「どうぞ、お入りください」と返事をする。わかりやすいたとえだと感じました。

 時々辟易とすることがあります。ある本屋さんに入ると店員さんが必ず大きな声で「いらっしゃいませ!」と言ってくれるのですが、本棚に向かい本の整理をしながらで、全く私の方は全く向いていないという時です。きっとお店のマニュアルには「大きな声であいさつを」としか記載されていないのでしょう。なぜあいさつをするのかの目的が共有化されていないのでしょう。これではあいさつではなく、単なる発声ですよね。せっかく大きな声が出ているのですから勿体ないことです。

 テレワークが多くなりなかなかあいさつをする機会がないかもしれませんが、家のなかで、ちょっと散歩したときにはできますよね。あるいは、メールを送るときにも、すぐに事務的な文言から始めるのではなく、ちょっとしたあいさつを交わすのもいいのではないでしょうか。